2.35 極値

定義 2.149 (極値)   関数 $ f(x,y)$ が, 点 $ (a,b)$ とその任意の近傍の点 $ (a+h,b+k)$ に対して

$\displaystyle f(a,b)>f(a+h,b+k)$    

をみたすとき,$ f(x,y)$ は点 $ (a,b)$極大値 $ f(a,b)$ をとるという. また,

$\displaystyle f(a,b)<f(a+h,b+k)$    

をみたすとき,$ f(x,y)$ は点 $ (a,b)$極小値 $ f(a,b)$ をとるという. 極大値,極小値を総称して極値という.

定理 2.150 (極値の必用条件)   関数 $ f(x,y)$ が点 $ (a,b)$ で極値をとるとき,

$\displaystyle f_x(a,b)=0, \qquad f_y(a,b)=0$    

が成り立つ. (注意)逆は成り立たない.


(証明)     平面 $ y=b$ と曲面 $ z=f(x,y)$ との共有点からなる曲線 $ z=f(x,b)$$ x$ についての 1 変数関数であり, $ f(x,y)$ が極値をとるとき $ f(x,b)$ も極値をとる. よって, $ f_x(a,b)=0$ となる. 同様にして,平面 $ x=a$ を考えると $ f_y(a,b)=0$ を得る.

注意 2.151 (極値と接平面)   関数 $ f(x,y)$ は点 $ (a,b)$ で極値をとるとする. このとき $ f_{x}(a,b)=0$, $ f_{y}(a,b)=0$ であるから, $ f(x,y)$ を点 $ (a,b)$ のまわりでテイラー展開すると

$\displaystyle f(x,y)$ $\displaystyle =f(a,b)+ \frac{1}{2}f_{xx}(a,b)(x-a)^2+ f_{xy}(a,b)(x-a)(y-b)+ \frac{1}{2}f_{yy}(a,b)(y-b)^2+\cdots$    

となり,1 次の項は存在しない. また, 曲面 $ z=f(x,y)$ の点 $ (a,b)$ における接平面の方程式は

$\displaystyle z=f(a,b)$    

となり,法線ベクトルは

$\displaystyle \vec{n}= \begin{bmatrix}f_x(a,b) \\ f_y(a,b) \\ -1 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix}0 \\ 0 \\ -1 \end{bmatrix}$    

である.接平面は $ xy$ 平面に平行である.

2.152 (極値の計算例)   関数 $ f(x,y)=x^4+y^4$ の極値を考える. 連立方程式

$\displaystyle f_x(x,y)=4x^3=0, \quad f_y(x,y)=4y^3=0$    

を解くと候補の点 $ (x,y)=(0,0)$ を得る. このとき点 $ (0,0)$ とその任意の近傍の点 $ (h,k)$ に対して,

$\displaystyle f(h,k)-f(0,0)=h^4+k^4>0 \quad\Rightarrow\quad f(h,k)>f(0,0)$    

が成り立つ. よって関数 $ f(x,y)$ は極小値 $ f(0,0)=0$ をとる.

2.153 (鞍点)   関数 $ f(x,y)=x^2-y^2$ の極値を考える. 連立方程式

$\displaystyle f_x(x,y)=2x=0, \quad f_y(x,y)=-2y=0$    

を解くと候補の点 $ (x,y)=(0,0)$ を得る. しかし,$ f(0,0)=0$ は極値とはならない. なぜなら,点 $ (0,0)$$ x$ 軸方向にずれた近傍の点 $ (h,0)$ に対しては,

$\displaystyle f(h,0)-f(0,0)=h^2>0 \quad\Rightarrow\quad f(h,0)>f(0,0)$    

となり,$ f(0,0)$ は極小となる. 一方, 点 $ (0,0)$$ y$ 軸方向にずれた近傍の点 $ (0,k)$ に対しては,

$\displaystyle f(0,k)-f(0,0)=-k^2<0 \quad\Rightarrow\quad f(0,k)<f(0,0)$    

となり,$ f(0,0)$ は極大となる. このようにある方向では極小であり, また別の方向では極大となる点のことを 鞍点(saddle point)という.
\includegraphics[width=0.7\textwidth]{saddle.eps}

定理 2.154 (極値)   関数 $ f(x,y)$ において点 $ (a,b)$ $ f_x(a,b)=0$, $ f_y(a,b)=0$ をみたすとき, $ f(a,b)$ が極値となるための判定条件は次の通りである. ただし,

$\displaystyle D(a,b)=f_{xy}(a,b)^2-f_{xx}(a,b)f_{yy}(a,b)$    

とおく.
(i).
$ D(a,b)<0$, $ f_{xx}(a,b)>0$ のとき, $ f(x,y)$ は点 $ (a,b)$ で極小値をとる.
(ii).
$ D(a,b)<0$, $ f_{xx}(a,b)<0$ のとき, $ f(x,y)$ は点 $ (a,b)$ で極大値をとる.
(iii).
$ D(a,b)>0$ のとき, $ f(x,y)$ は点 $ (a,b)$ で極値をとらない.
(iv).
$ D(a,b)=0$ のとき,個別に判定する.


(証明)     typing...

2.155 (極値の計算例)   関数 $ f(x,y)=x^2+y^2$ の極値を求める. 連立方程式

$\displaystyle f_x=2x=0, \qquad f_y=2y=0$    

を解くと極値の候補として $ (x,y)=(0,0)$ を得る.このとき,

  $\displaystyle f_{xx}=2>0, \quad f_{xy}=0, \quad f_{yy}=2, \quad D=f_{xy}{}^2-f_{xx}f_{yy}=-4<0$    

となる. よって,$ f(0,0)=0$ は極小値である.

2.156 (極値の計算例)   関数 $ f(x,y)=x^2+y^3$ の極値を求める. 連立方程式

$\displaystyle f_x=2x=0, \qquad f_y=3y^2=0$    

を解くと極値の候補として $ (x,y)=(0,0)$ を得る.このとき,

  $\displaystyle f_{xx}(x,y)=2, \quad f_{xy}(x,y)=0, \quad f_{yy}(x,y)=6y, \quad D(x,y)=f_{xy}{}^2-f_{xx}f_{yy}=-12y$    

となる. $ D(0,0)=0$ であるから判別式 $ D$ を用いて極値となるかは判定できない. そこで,点 $ (0,0)$ と その近傍の点 $ (0,k)$, $ (0,-k)$ を考える. ただし, $ k>0$ とする. このとき,

$\displaystyle f(0,k)-f(0,0)=k^3>0 \quad$ $\displaystyle \Rightarrow\quad f(0,k)>f(0,0)$    
$\displaystyle f(0,-k)-f(0,0)=-k^3<0 \quad$ $\displaystyle \Rightarrow\quad f(0,-k)<f(0,0)$    

が成り立つ. 点 $ (0,0)$ から $ y$ 軸正の方向には増加傾向であり, $ y$ 軸負の方向には減少傾向となるので, $ f(0,0)=0$ は極値ではない.
\includegraphics[width=0.7\textwidth]{kyokuchi.eps}

2.157 (極値の計算例)   関数 $ f(x,y)=x^2+y^2-2x+4y+10$ の極値を求める. 連立方程式

$\displaystyle f_x=2x-2=0, \qquad f_y=2y+4=0$    

を解くと極値の候補として $ (x,y)=(1,-2)$ を得る.このとき,

  $\displaystyle f_{xx}=2>0, \quad f_{xy}=0, \quad f_{yy}=2, \quad D=f_{xy}{}^2-f_{xx}f_{yy}=-4<0$    

となる. よって,$ f(1,-2)=5$ は極小値である.

2.158 (極値の計算例)   関数 $ f(x,y)=x^3+y^3+3xy+2$ の極値を求める. 連立方程式

$\displaystyle f_x=3x^2+3y=0, \qquad f_y=3y^2+3x=0$    

を解く. 第 1 式を $ y=-x^2$ と変形して第 2 式に代入すると

$\displaystyle x(x^3+1)=0$    

となる.これを解くと,極値の候補として

$\displaystyle (x,y)=(0,0), (-1,-1)$    

を得る.このとき,

  $\displaystyle f_{xx}(x,y)=6x, \quad f_{xy}(x,y)=3, \quad f_{yy}(x,y)=6y, \quad D(x,y)=f_{xy}{}^2-f_{xx}f_{yy}= 9-36xy$    

を用いて極値であるか判定する. まず, $ (x,y)=(0,0)$ の場合. $ D(0,0)=9>0$ より $ f(0,0)=2$ は極値ではない. 次に, $ (x,y)=(-1,-1)$ の場合. $ D(-1,-1)=-27<0$, $ f_{xx}(-1,-1)=-6<0$ より, $ f(-1,-1)=1$ は極大値である.
\includegraphics[width=0.7\textwidth]{kyokuchi2.eps}

2.159 (極値)   次の関数の極値を求めよ.

(1)     $ f(x,y)=1-2x^2-xy-y^2+2x-3y$      (2)     $ f(x,y)=x^2-2xy+y^2-x^4-y^4$

Kondo Koichi
平成18年1月18日