2.21 斜交座標
次元ユークリッド空間に 普通に導入する座標 は, 標準基底
における座標である. 座標を とすると任意のベクトルは
☆
と表される. 一方, 基底
における座標を とおくと, 任意のベクトルは
★
と表される. ベクトル は同じものであるから, (☆), (★)より
○
が成り立つ. 基底 , は 1 次独立であるから, は正則で逆行列 が存在し,
●
が成り立つ. (○)を座標 から座標 への座標変換という. また,(●)を 座標 から座標 への座標変換という. 標準基底 , は をみたし直交するから, 座標 は直交座標である. 基底 , の 方向余弦
は一般には 0 とはならないので, 座標 は斜交座標である.
問 2.78 (直交座標と斜交座標) 基底 , に関して次の問に答えよ.(1) と が直交する , , , の条件を求めよ.
(2) , が単位ベクトルとなる , , , の条件を求めよ.
(3) , が直交しかつ単位ベクトルとなる , , , の条件を求めよ.
例 2.79 (直交座標から斜交座標へのヤコビアン) 直交座標 から斜交座標 への座標変換(○)の ヤコビアンを求める. (○)より
であるから,
となり, ヤコビアン
を得る.
例 2.80 (斜交座標における偏微分作用素) 直交座標 から斜交座標 への座標変換(○)を考える. 関数 における , に関する偏導関数を求める. 導関数の微分則を用いると
△
を得る.この関係式は
♭
とも表される.また, ナブラ作用素
を導入すれば
と簡潔に表される. 次に(△)において関数 は任意でもよいので 関数を省略すると, 偏微分演算子の関係式
を得る. この関係式は偏微分作用素に関する 座標から 座標への変換を表す. 点に関する座標変換(○)の逆向きの変換であることに注意する.
例 2.81 (斜交座標における偏微分作用素) 斜交座標 から直交座標 への座標変換(●)を考える. 関数 における , に関する偏導関数を求める. (●)より座標変換は
であるか,導関数の微分則を用いると
▲
を得る.この関係式は
とも表される. この結果は(♭)の両辺に を左から 掛けることでも得られる. また,ナブラ作用素を導入すると
と簡潔に表される. 次に(▲)において関数 は任意で成り立つので 省略すると, 偏微分作用素の関係式
◎
を得る. この関係式は偏微分作用素に関する 座標から 座標への変換を表す. 点に関する座標変換(●)の逆向きの変換であることに注意する.
例 2.82 (斜交座標への座標変換) 関数 に対して関数
を考える. この関数を斜交座標 で表す. (▲)を代入すると
を得る.
問 2.83 (斜交座標への座標変換) この関数 が斜交座標 で
と表されるための , , , の必要十分条件は, 基底 , が 正規直交基底であることを示せ. またこのとき,行列 は直交行列となる( をみたす) ことを示せ.
例 2.84 (斜交座標におけるラプラシアン) 関数 に対して関数
を考える. この関数を斜交座標 で表す. (◎)より
となるらか,
を得る.
例 2.85 (斜交座標におけるラプラシアン) 直交座標 から斜交座標 への座標変換(○)を考える. このとき ラプラシアン(Laplacian)または ラプラス作用素(Laplace operator) と呼ばれる 偏微分作用素
の 座標への変換を行う. 前例題において関数 は任意であるから,
を得る.
問 2.86 (斜交座標におけるラプラシアン) 斜交座標 におけるラプラシアンが
となるための , , , の必要十分条件は, 基底 , が 正規直交基底であることを示せ. またこのとき,行列 は直交行列となる( をみたす) ことを示せ.
問 2.87 (斜交座標) 座標 から斜交座標 への座標変換
に対してそれぞれ,次の問に答えよ.(i) , をみたす の軌跡をそれぞれ書け.
(ii) 軸( の直線)と 軸( の直線)の 方向ベクトルを求めよ.
(iii) 軸と 軸のなす角度を求めよ.
(iv) 座標 に対して, 座標 を求めよ.
(v) 座標 に対して, 座標 を求めよ.
(vi) 直線 を座標 で表せ.
(vii) 曲線 を座標 で表せ.
(viii) ヤコビアン を求めよ.
(ix) 偏微分作用素に関する座標 から座標 への 座標変換を求めよ.
(x) 偏微分作用素に関する座標 から座標 への 座標変換を求めよ.
(xi) 関数 に対する関数 を座標 で表わせ.
(xii) 関数 に対する関数 を座標 で表わせ.
(xiii) ラプラス作用素 を座標 で表わせ.
Kondo Koichi
平成18年1月18日