2.8 ランダウの記号

定義 2.38 (ランダウの記号)   関数 $f(x)$, $g(x)$ に対して

$$\lim_{x\to a} \left\vert\frac{f(x)}{g(x)}\right\vert=0$$

が成り立つとき，

$$f(x)=o(g(x))\quad (x\to a)$$

と表記する． $o(\cdot)$ はランダウ（Landau）の記号であり， ラージオーと読む． またこのとき， $f$ は $g$ に比べ無視できるという．

定義 2.39 (ランダウの記号)   関数 $f(x)$, $g(x)$ に対して

$$\lim_{x\to a} \left\vert\frac{f(x)}{g(x)}\right\vert=b<\infty$$

が成り立つとき，

$$f(x)=O(g(x))\quad (x\to a)$$

と表記する． $O(\cdot)$ はランダウ（Landau）の記号であり， スモールオーと読む． またこのとき $f$ は $g$ で押さえられるという．

注意 2.40 (二つのランダウの記号の関係)   関数 $f(x)$, $g(x)$ に対して

$$f(x)=O(g(x))\quad (x\to a)$$

が成り立つとき， $b\neq0$ であれば $${\lim_{x\to a} \left(\frac{f(x)}{g(x)}-b\right)=0}$$ となるので

$$f(x)=b\,g(x)+o(g(x)) \quad (x\to a)$$

が成り立つ．

定義 2.41 (無限大，無限小)   関数 $f(x)$, $g(x)$ が $x\to a$ において無限小または 無限大となるとき，次の呼び方を定義する．

• $f\to 0$, $g\to 0$, $f=o(g)$ $(x\to a)$ のとき， $f$ は $g$ より高次の無限小と呼ぶ． または $g$ は $f$ より低次の無限小と呼ぶ．
• $f\to \pm\infty$, $g\to \pm\infty$, $f=o(g)$ $(x\to a)$ のとき， $f$ は $g$ より低次の無限大と呼ぶ． または $g$ は $f$ より高次の無限大と呼ぶ．
• $f\to 0$, $g\to 0$, $f=O(g)$ $(x\to a)$ のとき， $f$ と $g$ とは同次の無限小と呼ぶ．
• $f\to \pm\infty$, $g\to \pm\infty$, $f=O(g)$ $(x\to a)$ のとき， $f$ と $g$ とは同次の無限大と呼ぶ．

例 2.42 (ランダウの記号の使用例)   $\sin x$ の極限 $x\to 0$ において，

$$\lim_{x\to0} \frac{\sin x}{x}=1$$

より

$$\sin x = O(x)\quad(x\to0)$$

が成り立つ． よって， $x\to 0$ において $\sin x$ と $x$ とは同次の無限小である． また，

$$\frac{\sin x-\left(x-\frac{x^3}{3!}\right)}{x^5}= \frac{R_5(x)}{x... ...theta x)}{5!}x^5}{x^5}= \frac{\cos(\theta x)}{5!} \to \frac{1}{5!} \quad(x\to0)$$

$$\frac{\sin x-\left(x-\frac{x^3}{3!}\right)}{x^4}= \frac{R_5(x)}{x... ...rac{\cos(\theta x)}{5!}x^5}{x^4}= \frac{\cos(\theta x)}{5!}x \to 0 \quad(x\to0)$$

より，

$$\sin x = x-\frac{x^3}{3!}+O(x^5) \quad(x\to0) \sin x = x-\frac{x^3}{3!}+o(x^4) \quad(x\to0)$$

が成り立つ． よって， $x\to 0$ において $R_5(x)$ と $x^5$ とは同次の無限小であり， $R_5(x)$ は $x^4$ より高次の無限小である．

例 2.43 (ランダウの記号の使用例)   $\sqrt{x+x^2}$ の極限 $x\to\infty$ において，

$$\lim_{x\to\infty}\frac{\sqrt{x+x^2}}{x}= \lim_{x\to\infty}\sqrt{\frac{1}{x}+1}=1$$

より

$$\sqrt{x+x^2}=O(x) \quad(x\to\infty)$$

が成り立つ． よって， $x\to\infty$ において $\sqrt{x+x^2}$ と $x$ とは 同次の無限大である． また，

$$\lim_{x\to\infty}\frac{\sqrt{x+x^2}}{x^2}= \lim_{x\to\infty}\sqrt{\frac{1}{x^3}+\frac{1}{x^2}}=0$$

より

$$\sqrt{x+x^2}=o(x^2) \quad(x\to\infty)$$

が成り立つ． よって， $x\to\infty$ において $\sqrt{x+x^2}$ は $x^2$ より 低次の無限大である．

注意 2.44 (テイラー展開とランダウの記号)   テイラー展開により

$$f(x) = f(a)+f'(a)(x-a)+ \frac{f''(a)}{2}(x-a)^2+ \cdots+ \frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^{n}+ O\left((x-a)^{n+1}\right)\,,$$

$$f(x) = f(a)+f'(a)(x-a)+ \frac{f''(a)}{2}(x-a)^2+ \cdots+ \frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^{n}+ o\left((x-a)^{n}\right)$$

が成り立つ．なぜなら

$$\lim_{x\to a} \left\vert\frac{R_{n+1}(x)}{(x-a)^{n+1}}\right\vert... ...))}{(n+1)!}\right\vert= \left\vert\frac{f^{(n+1)}(a)}{(n+1)!}\right\vert<\infty$$

となるからである．同様に

$$\lim_{x\to a} \left\vert\frac{R_{n+1}(x)}{(x-a)^{n}}\right\vert= ... ...)!}(x-a)\right\vert= \left\vert\frac{f^{(n+1)}(a)}{(n+1)!}\times 0\right\vert=0$$

となることより得られる．

例 2.45 (ランダウの記号の使用例)  

$$e^{x} =1+x+O(x^2) \quad(x\to0)$$

$$=1+x+o(x) \quad(x\to0)$$

$$=1+x+\frac{x^2}{2}+O(x^3) \quad(x\to0)$$

$$=1+x+\frac{x^2}{2}+o(x^2) \quad(x\to0)$$

例 2.46 (ランダウの記号の使用例)  

$$\log(1+x) =x-\frac{x^2}{2}+O(x^3) \quad(x\to0)$$

$$=x-\frac{x^2}{2}+o(x^2) \quad(x\to0)$$

$$=x-\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{6}+O(x^4) \quad(x\to0)$$

$$=x-\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{6}+o(x^3) \quad(x\to0)$$

Kondo Koichi
平成18年1月18日