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4 行列の簡約化
連立一次方程式
(367) (368)
を考えよる. これらの方程式は 解が一意には定まらない例である. このような方程式の解を具体的に求める.方程式(1)を変形すると
(369)
である. この式より は任意の値をとることが可能であり, はその与えられた の値に対して一つ値が一つ定まる. よって解として
(370)
を得る. ただし は任意の定数とする. また解は
(371)
と書ける. よって解全体がなす集合は点 を通り 方向ベクトル の直線となる.方程式(2)の解を求める. 方程式を書き直すと
(372)
となる. 左辺には , があり, 右辺は のみである. 右辺の に値が与えられれば, その に対応して左辺の , の値が定まる. よって を任意の値として とおくと, 解として
(373)
を得る. 解全体の集合は 3 次元空間 内の 点 を通り方向ベクトル の直線である.拡大係数行列はそれぞれ
(374)
となる. もっと一般には次のような行列を考える.
定義 3.15 (階段行列) 行列が
(375)
という形をしているとき, この行列を簡約な行列または 階段行列と呼ぶ. また, 各行の一番左の 0 ではない成分を主成分と呼ぶ.
例 3.16 (簡約な行列の具体例) 次の行列は簡約な行列である:
(376) (377)
定義 3.17 (簡約化) 行列 に基本変形を繰り返し, 簡約な行列 を得ることを簡約化と呼ぶ.
例 3.18 (簡約化の計算例) 簡約化の具体的な計算例を示す:
(1)
(378) (第一行目を 倍する.) (379) (380)
(2)
(381) (第二行目と第三行目を入れ替える.) (382) (383)
(3)
(384) (第二行目を 倍し第一行目に加える.) (385) (386) (第三行目を 倍し第一行目に加える.) (387) (388)
(4)
(389) (第一行目を第三行目を入れ替える.) (390) (391)
定理 3.19 (簡約化の一意性) 任意の行列は基本変形により一意に簡約化できる.
定義 3.20 (行列の階数) 行列 を簡約化した行列を とする. このとき 行列 に対する行列の階数(rank)を
の零ベクトルではない行の個数 (392)
と定義する.
例 3.21 (階数の具体例)
(393)
定理 3.23 (階数に関する定理) 行列 が 型のとき,
(396)
が成り立つ.
問 3.24 これを示せ.
問 3.25 教科書(p.27)問題2.2.
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Created at 2004/11/26