Next: 6 ちょっとまとめ Up: 3 連立一次方程式 Previous: 4 行列の簡約化   Contents
5 連立一次方程式の解法
例 3.26 (任意定数を含む解の具体例) 方程式
(397)
を考える. 拡大係数行列の簡約化を行なうと,
(398)
を得る. ここで
(399)
が成立することに注意する. 簡約化された拡大係数行列より方程式を復元すると,
(400)
である. 主成分の列と同じ位置にある変数を左辺に残し, 他の項を右辺に移項すると
(401)
となる. 右辺にある変数 , は独立に任意の値をとる. よって , とおけば,解として
:任意定数 (402) (403)
を得る. 解は 5 次元平面 内の ある 2 次元平面となる.
例 3.27 (解が存在しない具体例) 方程式
(404)
を考える. 拡大係数行列の簡約化を行なうと,
(405)
を得る. 方程式に書き戻すと
(406)
となる. 最後の行は となるから, どのような をとっても成立することはない. よってこの連立方程式の解は存在しない. ここで
(407)
が成り立つことに注意する. このとき解をもたない.連立一次方程式
(408)
を考える. 以後この方程式に対して議論する.方程式 の解を求めるには まず,拡大係数行列 の簡約化を行なう. このとき得られた行列が
(409)
と得られたとしよう. このとき零ベクトルではない一番下の行に着目すると
(410)
となる. となり矛盾する. よってこのとき, 方程式 は解をもたない. 各係数行列のランクに着目すると,
(411)
であるから,
(412)
が成り立つ. この条件のもとでは解をもたない. 次に簡約化の結果として
の簡約化行列 (413)
を得たとする. こときは解をもつ. 係数行列のランクは が成り立つ. 以上をまとめると次の定理が成り立つ.
定理 3.28 (連立一次方程式の可解条件) 方程式 が解をもつための 必要十分条件は
(414)
である.解に任意定数を含まないのは, 簡約行列のすべての列に主成分が現れるときである. つまり係数行列のランクと変数の個数が一致するときである. これをまとめると以下の定理を得る.
定理 3.29 (一意な解をもつ条件) 方程式 が唯一つの解をもつための 必用十分条件は
(415)
である.
定理 3.30 (任意定数を含む解をもつ条件) 方程式
(416)
は
(417)
のとき任意定数を含む解をもつ. このとき任意定数の個数は
(418)
である.
定義 3.31 (同次形方程式) において が成り立つとき, 方程式 は同次形(homogeneous)と呼ぶ. とき非同次形(inhomogeneous)と呼ぶ.
定理 3.32 (同次形の解の存在) 同次方程式は が常になり立つので, 常に解 をもつ.
定義 3.33 (同次形の自明解) 同次方程式 の解 を 自明な解と呼ぶ.
定理 3.34 (同次方程式の解) 同次方程式 について次の条件が成り立つ:
- (1)
- 自明な解 のみをもつための必用十分条件は
(419)
である.- (2)
- のとき,方程式は自明でない解(任意定数を含む解)をもつ.
(証明)(1)前述の定理より唯一つの解をもつための必要十分条件は
(420)
である. 拡大係数行列の一番右の列の はランクに影響を与えない. よって定理の条件を得る.(2) , と条件 より
(421)
を得る.(1)の定理より自明でない解をもつ. 証明終了.
例 3.35 (同次形方程式の解) 方程式
(422)
を考える. 係数行列を簡約化して
(423)
を得る.よって解は
(424)
となる. 解は原点を通る2次元平面である.
Next: 6 ちょっとまとめ Up: 3 連立一次方程式 Previous: 4 行列の簡約化   ContentsKondo Koichi
Created at 2004/11/26