1.3 複素数
定義 1.6 (複素数) 複素数(complex number)とは, 実数 , に対して で定まる数である. ただし は をみたし, 虚数単位(imaginary unit)と呼ぶ. 複素数 の を実部(real part)といい と表す. を虚部(imaginary part)といい と表す. 虚部が のとき は実数(real number)といい, 虚部が 0 でない複素数を虚数(imaginary number)といい, 実部が の虚数を 純虚数(pure imaginary number)という.
定義 1.7 (複素平面) 複素数全体の集合を と表す. この集合を実部 を横軸に 虚部 を縦軸にとることできる平面を 複素平面(complex plane)と呼ぶ. このとき横軸を実軸(real axis)といい, 縦軸を虚軸(imaginary axis)という.
定義 1.8 (複素共役) 複素数 に対して複素数 を の複素共役(complex conjugate)という.
定義 1.9 (複素数の絶対値と偏角) 複素数 に対して実数 を の絶対値(absolute value) または大きさ(modulus)という. を の 偏角(argument)という.
注意 1.10 (複素数の絶対値と偏角) 複素平面上で原点 0 とあるある複素数 との 距離は の絶対値 である. また,実軸と 2 点 0, を通る直線とのなす角は の偏角 である. ただし, は をみたせばよいので, に の整数倍を加えたものもまた偏角であるから,
(1)
と任意性がある. 特に,偏角のなかで をみたすものを 偏角の主値とよび と書くことにする.
定義 1.11 (極形式) 複素数 は
(2)
と表せる.これを複素数の極形式という.
定義 1.12 (オイラーの公式)
(3)
注意 1.13 (複素数の演算) 複素数 , に対して 次の四則演算が成り立つ:
(4) (5) (6)
定理 1.14 (複素数の性質) 次の性質が成り立つ:(1) (2) . (3) . (4) (5)
(6) (7) (8) (9) (10)
(11) (12) (13) (14)
(15) は実数. (16) は純虚数. (17)
(18) (19)
問 1.15 (複素数の性質) これらの性質を示せ.
例 1.16 (極形式) 複素数 の大きさは であり, 偏角は である. の極形式は
(7)
となる.
例 1.17 (極形式) 複素数 の大きさは であり, 偏角は である. の極形式は
(8)
となる.
例 1.18 (べき乗の根) をみたす複素数 を求める. 極形式にして式変形すると
(9) (10)
を得る. の両辺に根号をとると が成り立つ.
例 1.19 (多項式の根) の根を求める. 実数と同じように解の公式を用いると
(11)
となる. を極形式で表すと
(12)
であるから,
(13)
となり,
(14)
を得る.
平成20年4月22日