1.5 ベクトルの座標

定義 1.24 (ベクトルの座標)   位置ベクトル $ \vec{x}\in\mathbb{R}^{n}$

$\displaystyle \vec{x}$ $\displaystyle = x_{1}\vec{e}_{1}+ x_{2}\vec{e}_{2}+ \cdots x_{n}\vec{e}_{n}$ (18)

と表されるとき, 係数の組 $ (x_{1},x_{2},\cdots,x_{n})$ を 基本ベクトル $ \{\vec{e}_{1}$, $ \vec{e}_{2}$, $ \cdots$, $ \vec{e}_{n}\}$ に関するベクトル $ \vec{x}$座標(coordinate)という.

また, $ \mathbb{R}^{n}$基底(basis) (座標軸と同じ向きのベクトル) $ \vec{u}_{1}$, $ \vec{u}_{2}$, $ \cdots$, $ \vec{u}_{n}$ が 与えられているとする. 位置ベクトル $ \vec{x}\in\mathbb{R}^{n}$

$\displaystyle \vec{x}$ $\displaystyle = y_{1}\vec{u}_{1}+ y_{2}\vec{u}_{2}+ \cdots y_{n}\vec{u}_{n}$ (19)

と表されるとき, 係数の組 $ (y_{1},y_{2},\cdots,y_{n})$ を 基底 $ \{\vec{u}_{1}$, $ \vec{u}_{2}$, $ \cdots$, $ \vec{u}_{n}\}$ に関するベクトル $ \vec{x}$座標(coordinate)という.

1.25 (ベクトルの座標の具体例)   $ \mathbb{R}^{2}$ 空間とその中の点

$\displaystyle \vec{c}_{1}=2\vec{a}+\vec{b}\,,\quad \vec{c}_{2}=3\vec{a}-\vec{b}\,,\quad \vec{c}_{3}=\alpha\vec{a}+\beta\vec{b}\quad \in\mathbb{R}^{2}$ (20)

を考える. ただし,$ \vec{a}$, $ \vec{b}$ は基底であり,

$\displaystyle \Sigma'= \left\{\vec{a},\vec{b}\right\}= \left\{ \begin{bmatrix}1 \\ -1 \end{bmatrix}, \begin{bmatrix}2 \\ 1 \end{bmatrix} \right\}$ (21)

とする. このとき

$\displaystyle \vec{c}_{1}$ $\displaystyle = \begin{bmatrix}4 \\ -1 \end{bmatrix}= 4\vec{e}_{1}-\vec{e}_{2}\,,$ (22)
$\displaystyle \vec{c}_{2}$ $\displaystyle = \begin{bmatrix}1 \\ -4 \end{bmatrix}= \vec{e}_{1}-4\vec{e}_{2}\,,$ (23)
$\displaystyle \vec{c}_{3}$ $\displaystyle = \begin{bmatrix}\alpha+2\beta \\ -\alpha+\beta \end{bmatrix}= (\alpha+2\beta)\vec{e}_{1}+ (-\alpha+\beta)\vec{e}_{2}$ (24)

が成り立つ. ベクトル $ \vec{c}_{1}$, $ \vec{c}_{2}$, $ \vec{c}_{3}$ の 基本ベクトル

$\displaystyle \Sigma= \{\vec{e}_{1},\vec{e}_{2}\}= \left\{ \begin{bmatrix}1\\ 0 \end{bmatrix}, \begin{bmatrix}0\\ 1 \end{bmatrix} \right\}$ (25)

に関する座標はそれぞれ $ (4,-1)_{\Sigma}$, $ (1,-4)_{\Sigma}$, $ (\alpha+2\beta,-\alpha+\beta)_{\Sigma}$ である. ベクトル $ \vec{c}_{1}$, $ \vec{c}_{2}$, $ \vec{c}_{3}$ の 基底 $ \{\vec{a}$, $ \vec{b}\}$ に関する座標は それぞれ $ (2,1)_{\Sigma'}$, $ (3,-1)_{\Sigma'}$, $ (\alpha,\beta)_{\Sigma'}$ である.

これは次のように考える. $ \mathbb{R}^{2}$ の座標軸を $ x_{1}x_{2}$ とする. これとは別の座標軸として $ y_{1}y_{2}$ を導入する. 原点を通り $ \vec{a}$ と同じ向きの座標軸を $ y_{1}$ とし, 同様に $ \vec{b}$ と同じ向きの座標軸を $ y_{2}$ とする. 座標軸 $ y_{1}$, $ y_{2}$ の目盛はそれぞれ $ \vec{a}$, $ \vec{b}$ の長さを $ 1$ として書く. このとき点 $ C_{1}(\vec{c}_{1})$, $ C_{2}(\vec{c}_{2})$, $ C_{3}(\vec{c}_{3})$ は 座標軸 $ y_{1}y_{2}$ 上の座標で表すと それぞれ $ (2,1)_{\Sigma'}$, $ (3,-1)_{\Sigma'}$, $ (\alpha,\beta)_{\Sigma'}$ となる.

注意 1.26 (ベクトルの座標)   標準基底 $ \{\vec{e}$, $ \cdots$, $ \vec{e}_n\}$ における座標 $ (x_1,\cdots,x_n)$ はベクトルの成分となる.


平成20年2月2日