3.11 同次形の解

定義 3.38 (同次形方程式)   $ A\,\vec{x}=\vec{b}$ において $ \vec{b}=0$ が成り立つとき, 方程式 $ A\,\vec{x}=\vec{0}$同次形(homogeneous)と呼ぶ. $ \vec{b}\neq\vec{0}$ とき非同次形(inhomogeneous)と呼ぶ.

定理 3.39 (同次形の解の存在)   同次方程式は $ \mathrm{rank}\,(A)=\mathrm{rank}\,[A\vert\vec{0}]$ が常になり立つので, 常に解 $ \vec{x}=\vec{0}$ をもつ.

定義 3.40 (同次形の自明解)   同次方程式 $ A\,\vec{x}=\vec{0}$ の解 $ \vec{x}=\vec{0}$自明な解と呼ぶ.

定理 3.41 (同次方程式の解)   同次方程式 $ A\,\vec{x}=\vec{0}$ について次の条件が成り立つ:
(1)
自明な解 $ \vec{x}=\vec{0}$ のみをもつための必用十分条件は

$\displaystyle \mathrm{rank}\,(A)=n$ (466)

である.
(2)
$ m<n$ のとき,方程式は自明でない解(任意定数を含む解)をもつ.


(証明)(1)前述の定理より唯一つの解をもつための必要十分条件は

$\displaystyle \mathrm{rank}\,(A)=\mathrm{rank}\,([A\vert\vec{0}])=n$ (467)

である. 拡大係数行列の一番右の列の $ \vec{0}$ はランクに影響を与えない. よって定理の条件を得る.

(2) $ \mathrm{rank}\,(A)\leq m$, $ \mathrm{rank}\,(A)\leq n$ と条件 $ m<n$ より

$\displaystyle \mathrm{rank}\,(A)\leq m < n$ (468)

を得る.(1)の定理より自明でない解をもつ. 証明終了.

3.42 (同次形方程式の解)   方程式

$\displaystyle \begin{bmatrix}1 & -2 & 0 & 3 \\ 1 & -1 & 1 & 2 \end{bmatrix} \be...
...} \\ x_{2} \\ x_{3} \\ x_{4} \end{bmatrix}= \begin{bmatrix}0 \\ 0 \end{bmatrix}$ (469)

を考える. 係数行列を簡約化して

$\displaystyle \begin{bmatrix}1 & -2 & 0 & 3 \\ 1 & -1 & 1 & 2 \end{bmatrix}\to \begin{bmatrix}1 & 0 & 2 & 1 \\ 0 & 1 & 1 & -1 \end{bmatrix}$ (470)

を得る.よって解は

$\displaystyle \vec{x}= \begin{bmatrix}-2c_{1}-c_{2} \\ -c_{1}+c_{2} \\ c_{1} \\...
... \\ 1 \\ 0 \\ 1 \end{bmatrix}\qquad (\forall c_{1}, \forall c_{2}\in\mathbb{R})$ (471)

となる. 解は原点を通る2次元平面である.

3.43 (同次形方程式の解)   方程式

$\displaystyle \begin{bmatrix}1 & 2 & 1 \\ 2 & 3 & 1 \\ 1 & 2 & 2 \end{bmatrix} ...
...x_{1} \\ x_{2} \\ x_{3} \end{bmatrix}= \begin{bmatrix}0 \\ 0 \\ 0 \end{bmatrix}$ (472)

を考える. 係数行列を簡約化して

$\displaystyle \begin{bmatrix}1 & 2 & 1 \\ 2 & 3 & 1 \\ 1 & 2 & 2 \end{bmatrix} \to \begin{bmatrix}1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{bmatrix}$ (473)

を得る. $ \mathrm{rank}\,(A)=3$ であり, 任意定数の個数は $ n-\mathrm{rank}\,(A)=3-3=0$ となるから, 解は一意な解となる. 以上より解は自明な解 $ \vec{x}=\vec{0}$ のみである.

3.44 (同次形方程式の解)   方程式

$\displaystyle \begin{bmatrix}1 & 2 & 1 \\ 2 & 3 & 1 \\ \end{bmatrix} \begin{bmatrix}x_{1} \\ x_{2} \\ x_{3} \end{bmatrix}= \begin{bmatrix}0 \\ 0 \end{bmatrix}$ (474)

を考える. 行の個数と列の個数をみると $ m=2<n=3$ であるから, 必ず $ \mathrm{rank}\,(A)\geq 2$ となり, 任意定数の個数は $ n-\mathrm{rank}\,(A)\leq 3-2=1$ となる. 必ず $ 1$ 個以上の任意定数を含むから, 解は非自明な解となる.


平成20年2月2日