3.10 解をもつための連立 1 次方程式の条件

連立 1 次方程式

$\displaystyle A\,\vec{x}=\vec{b}\,,\qquad A=[a_{ij}]_{m\times n}\,,\quad \vec{b}=[b_{i}]_{m\times1}\,,\quad \vec{x}=[x_{j}]_{n\times1}$ (455)

を考える. 以後この方程式に対して議論する.

方程式 $ A\,\vec{x}=\vec{b}$ の解を求めるには まず,拡大係数行列 $ [A\vert\vec{b}]$ の簡約化を行なう. このとき得られた行列が

  $\displaystyle [A\vert\vec{b}] \overset{\text{簡約化}}{\longrightarrow} \left[\b...
... & & &&& \cdots & 0 & 0 \\ 0 & \cdots & & &&& \cdots & 0 & 0 \end{array}\right]$ (456)

と得られたとしよう. このとき零ベクトルではない一番下の行に着目すると

$\displaystyle 0\times x_{1}+0\times x_{2}+0\times x_{3}+\cdots+ 0\times x_{n} = 1$ (457)

となる.$ 0=1$ となり矛盾する. よってこのとき, 方程式 $ A\,\vec{x}=\vec{b}$ は解をもたない. 各係数行列のランクに着目すると,

  $\displaystyle A \overset{\text{簡約化}}{\longrightarrow} \left[\begin{array}{cc...
...& \cdots & & &&& \cdots & 0 \\ 0 & \cdots & & &&& \cdots & 0 \end{array}\right]$ (458)

であるから,

$\displaystyle \mathrm{rank}\,(A)<\mathrm{rank}\,([A\,\vert\,\vec{b}])$ (459)

が成り立つ. この条件のもとでは解をもたない. 次に簡約化の結果として

$ [A\vert\vec{b}]$ の簡約化行列$\displaystyle = \left[\begin{array}{cccccccc\vert c} \!1\! & ** & \!0\! & ** & ...
... & & &&& \cdots & 0 & 0 \\ 0 & \cdots & & &&& \cdots & 0 & 0 \end{array}\right]$ (460)

を得たとする. こときは解をもつ. 係数行列のランクは $ \mathrm{rank}\,(A)=\mathrm{rank}\,([A\vert\vec{b}])$ が成り立つ. 以上をまとめると次の定理が成り立つ.

定理 3.35 (連立 1 次方程式の可解条件)   方程式 $ A\,\vec{x}=\vec{b}$ が解をもつための 必要十分条件は

$\displaystyle \mathrm{rank}\,([A\vert\vec{b}])=\mathrm{rank}\,(A)$ (461)

である.

解に任意定数を含まないのは, 簡約行列のすべての列に主成分が現れるときである. つまり係数行列のランクと変数の個数が一致するときである. これをまとめると以下の定理を得る.

定理 3.36 (一意な解をもつ条件)   方程式 $ A\,\vec{x}=\vec{b}$ が唯一つの解をもつための 必用十分条件は

$\displaystyle \mathrm{rank}\,(A)=\mathrm{rank}\,([A\vert\vec{b}])=n$ (462)

である.

定理 3.37 (任意定数を含む解をもつ条件)   方程式

$\displaystyle A\vec{x}=\vec{b}\,,\quad A=[a_{ij}]_{m\times n}\,,\quad \vec{x}=[x_{j}]_{n\times 1}\,,\quad \vec{b}=[b_{i}]_{m\times 1}$ (463)

$\displaystyle \mathrm{rank}\,(A)=\mathrm{rank}\,[A\vert\vec{b}]<n$ (464)

のとき任意定数を含む解をもつ. このとき任意定数の個数は

$\displaystyle n-\mathrm{rank}\,(A)$ (465)

である.


平成20年2月2日