2.12 全微分と偏微分
定理 2.53 (全微分可能の必要条件) 関数 が全微分可能であれば, は偏微分可能であり,
が成り立つ.
(証明) 関数 が全微分可能であれば,
が成り立つ. 軸に沿って極限をとる. , とする. このとき, であるから,
が成り立つ. これは
と等価である. また, 軸に沿って極限をとる. , とすると, 同様にして を得る.
定理 2.54 (全微分可能の十分条件) 関数 において, 偏導関数 , が存在し, かつこれらが連続関数であれば, は全微分可能である. (注意)逆は成り立たない.
注意 2.55 (全微分可能の十分条件) 全微分可能となる十分条件は他にもあるが, 上の定理が一番実用的である.
例 2.56 (全微分) 関数 は 偏導関数
が存在し,これらは連続関数である. よって は全微分可能である. また, の全微分は
となる. (注意)微分 , と関数 , , の 書く順を入れ替えてはならない. つまり, や は 誤った表記である.
例 2.57 (全微分) 関数 は 偏導関数
が存在し,かつこれらは連続関数である. よって は全微分可能であり, の全微分は
となる.
例 2.58 (全微分) 関数 は 偏導関数
が存在し,かつこれらは原点を除き連続関数である. よって は原点を除き全微分可能であり, の全微分は
となる. (注意)微分 , と関数 , の 書く順を入れ替えてはならない. また,分母 の部分は微分 , の 前から が掛けられているという意味で あることに注意する. つまり,以下の表記はすべて誤った表記である:
例 2.59 (全微分) 関数 は 偏導関数
が存在し,かつこれらは連続関数である. よって は全微分可能であり, の全微分は
となる.
問 2.60 (全微分) 次の関数の全微分を求めよ.
Kondo Koichi
平成18年1月18日