5.20 関数の増減と極値

定義 5.49 (増加,減少,極値)   $ h$ を十分小さい正の数 $ h>0$ とする. このとき関数 $ f(x)$ に関して次の性質を定義する. 極大値,極小値を総称して極値と呼ぶ.

定理 5.50 (微分係数と増減,極値)   微分係数と関数の増減および極値の関係に関して次のことがいえる.


(証明) 関数 $ f(x)$ をテイラー展開して

$\displaystyle f(x)$ $\displaystyle =f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f''(a)}{2}(x-a)^2+O\left((x-a)^3\right)$ (805)

を得る.$ x=a\pm h$ とおくと

$\displaystyle f(a+h)$ $\displaystyle = f(a)+f'(a)\,h+\frac{f''(a)}{2}h^2+O(h^3)$ (806)
$\displaystyle f(a-h)$ $\displaystyle = f(a)-f'(a)\,h+\frac{f''(a)}{2}h^2+O(h^3)$ (807)

となる.$ h$ を十分小さな正の値として考える. $ h^3$ 以降の項は十分小さく無視できる. $ f'(a)>0$ のとき

$\displaystyle f(a)-f'(a)\,h<f(a)<f(a)+f'(a)\,h$ (808)

が成り立つので,テイラー展開の $ 2$ 次の項を無視しすれば

$\displaystyle f(a-h)<f(a)<f(a+h)$ (809)

を得る.よって $ f(x)$ は増加の状態にある. 次に $ f'(a)<0$ のとき,同様に

$\displaystyle f(a)-f'(a)\,h>f(a)$ $\displaystyle >f(a)+f'(a)\,h$ (810)
$\displaystyle \Rightarrow f(a-h)>f(a)$ $\displaystyle >f(a+h)$ (811)

となるので, $ f(x)$ は減少の状態にある. 次に $ f'(a)=0$, $ f''(a)<0$ のとき,

$\displaystyle f(a)+\frac{f''(a)}{2}\,h^2<f(a)$ $\displaystyle >f(a)+\frac{f''(a)}{2}\,h^2$ (812)
$\displaystyle \Rightarrow f(a-h)<f(a)$ $\displaystyle >f(a+h)$ (813)

となるので,$ f(x)$$ x=a$ において極大値をとる. 最後に $ f'(a)=0$, $ f''(a)>0$ のとき,

$\displaystyle f(a)+\frac{f''(a)}{2}\,h^2>f(a)$ $\displaystyle <f(a)+\frac{f''(a)}{2}\,h^2$ (814)
$\displaystyle \Rightarrow f(a-h)>f(a)$ $\displaystyle <f(a+h)$ (815)

となるので,$ f(x)$$ x=a$ において極小値をとる.

定理 5.51 (単調増加)   関数 $ f(x)$ が定義域内の任意の点で $ f'(x)>0$ であるとき, $ f(x)$ は単調増加である.

定理 5.52 (単調減少)   関数 $ f(x)$ が定義域内の任意の点で $ f'(x)<0$ であるとき, $ f(x)$ は単調減少である.

Kondo Koichi
平成17年8月31日