4.10 級数

級数(series)とは数列 $ \{a_{n}\}$ の和である. 式では

  $\displaystyle a_{1}+a_{2}+a_{3}+\cdots+a_{n}+\cdots$ (448)
  $\displaystyle =\sum_{n=1}^{\infty}a_{n}=\sum a_{n}$ (449)

と書き表す. 加法(足し算)は有限回の演算においてのみ定義されているので, 式([*])は形式的な和である. 厳密に級数を定義するには次のように考える. まず第 $ n$ 項までの有限和

$\displaystyle S_{n}=a_{1}+a_{2}+\cdots+a_{n}$ (450)

を考える. これを$ n$ 部分和(the $ n$-th partial sum)と呼ぶ. $ S_{n}$ に関する数列

$\displaystyle \{S_{n}\}=S_1,S_2,\cdots,S_{n}$ (451)

を考える. 数列 $ \{S_{n}\}$ の極限

$\displaystyle S=\lim_{n\to\infty}S_{n}$ (452)

が存在したとする. このとき級数 $ \sum a_{n}$ は存在し, その値は

$\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_{n}=S$ (453)

で与えられると定義する. 極限 $ S$ が存在するとき級数 $ \sum a_{n}$ は収束すると呼ぶ. 極限 $ S$ が存在しない場合は級数 $ \sum a_{n}$ は発散すると呼ぶ.

定義 4.31 (級数)   数列 $ \{a_{n}\}$ の和 $ \sum a_{n}$級数(series)と呼び, その値は

$\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} a_{n} = \lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{n}a_{k}$ (454)

で定義する. この極限が存在するとき 級数 $ \sum a_{n}$収束する(convergent)といい, 収束しない場合を 級数 $ \sum a_{n}$発散する(divergent)という.

定理 4.32 (級数の収束)   $ \sum a_{n}$, $ \sum b_{n}$ が収束するとき, $ \sum (\alpha\,a_{n}+\beta\,b_{n})$ もまた収束する. ただし $ \alpha$, $ \beta$ は定数とする. このとき

$\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}(\alpha\,a_{n}+\beta\,b_{n})= \alpha \sum_{n=1}^{\infty}a_{n}+ \beta \sum_{n=1}^{\infty}b_{n}$ (455)

が成り立つ.

注意 4.33 (順番の入れ替え)   定理 [*] は級数が収束するときに限り, 各項を足し合わせる順番を入れ替えてもよいことを意味する. 発散する場合は足し算の順番を入れ替えることはできない.

4.34 (無限級数の結合則)   数列 $ a_{n}=(-1)^{n-1}$ の 級数 $ \displaystyle{S=\sum_{n=1}^{\infty}(-1)^{n-1}}$ を考える. すなわち

$\displaystyle S$ $\displaystyle =1-1+1-1+1-1+1-1+\cdots$ (456)

である. 足し算の順を入れ替えると

$\displaystyle S$ $\displaystyle =(1-1)+(1-1)+(1-1)+(1-1)+\cdots$ (457)
  $\displaystyle =0+0+0+0+\cdots=0$ (458)

となる.また別の順で足し合わせると

$\displaystyle S$ $\displaystyle =1+(-1+1)+(-1+1)+(-1+1)+\cdots$ (459)
  $\displaystyle =1+0+0+0+\cdots=1$ (460)

となる. これらは矛盾する. どこが誤りであろうか? 有限の項の和の常識は無限の項の和には通用しない. この場合の間違いは足し算の順を変えたことである. この例では結合則が成り立たない. 定義 [*] に従えば級数 $ S$ は発散である.

4.35 (級数の計算)  

  $\displaystyle (1)\quad \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^2+n}$   $\displaystyle (2)\quad \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^2-n}$ (461)

Kondo Koichi
平成17年8月31日