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4 体

ある集合の元に対して四則演算が定義され, その集合内で閉じているとき, その集合を体と呼ぶ. 正確には次のように定義される.

定義 1.15 (体)   集合 $ K$ の任意の 2 つの元 $ a$, $ b$ に対して, 加法 $ a+b$ と乗法 $ ab$ が定義されているとする.


(1) $ (a+b)+c=a+(b+c)$. (和の結合則)
(2) $ \forall a+\exists 0=a=0+a$. (零元 0 の存在)
(3) $ \forall a+\exists(-a)=0=(-a)+a$. (和の逆元 $ -a$ の存在)
(4) $ a+b=b+a$. (和の交換則)
(5) $ (ab)c=a(bc)$. (積の結合則)
(6) $ a(b+c)=ab+ac$, $ (a+b)c=ac+bc$. (分配則)
(7) $ ab=ba$. (積の交換則)
(8) $ \forall a\exists1=a=1a$. (単位元 $ 1$ の存在)
(9) $ \forall a\exists(a^{-1})=1=(a^{-1})a$.ただし,$ a\neq0$ とする. (積の逆元 $ a^{-1}$ の存在)

定理 1.16 (零元,単位元,逆元の一意性)    
(1)
零元 0,単位元 $ 1$ は唯一つに定まる.
(2)
和の逆元 $ -a$ は各 $ a$ に対して唯一つに定まる.
(3)
積の逆元 $ a^{-1}$ は各 $ a$ に対して唯一つに定まる.

問 1.17 (零元,単位元,逆元の一意性)   これを示せ.


(証明)     (1) 零元が 0, $ 0'$ と二つ存在するとする. すなわち

$\displaystyle 0+a=a=0+a\,,\quad 0'+a=a=0'+a$ (1)

とする. この式は全ての元 $ a$ で成立するので, 第一式の $ a$$ 0'$ とし, 第二式の $ a$ を 0 とすると

$\displaystyle 0+0'=0'+0=0'\,,\quad 0'+0=0+0'=0$ (2)

となる. $ 0+0'=0'$, $ 0+0'=0$ より, $ 0=0'$ を得る. 零元は唯一つに定まる.

(2) $ a$ の和の逆元が $ b$, $ b'$ と二つ存在するとする. すなわち

$\displaystyle a+b=b+a=0\,,\quad a+b'=b'+a=0$ (3)

とする. $ a+b=0$ に左から $ b'$ を加えると

$\displaystyle b'+(a+b)=b'+0$ (4)

となる. 和の結合則より左辺の和の順を変える. 右辺は零元を加えているので

$\displaystyle (b'+a)+b=b'$ (5)

が成り立つ. $ b'+a=0$ を用いると

$\displaystyle 0+b=b'$ (6)

である.よって

$\displaystyle b=b'$ (7)

を得る. $ a$ に対する和の逆元は唯一つに定まる.

(3)    (2)と同様に示される.

例 1.18 (体の具体例)   数の集合

$\displaystyle \mathbb{N}\subset \mathbb{Z}\subset \mathbb{Q}\subset \mathbb{R}\subset \mathbb{C}\,.$ (8)

を考える.

例 1.19 (体の具体例)    


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Kondo Koichi
Created at 2004/12/13