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10 正則変換

定義 2.41 (正則変換)   線形変換 $ f:V\to V$上への 1 対 1 写像であるとき, $ f$正則変換(regular mappping) という.

注意 2.42 (逆変換)   上への 1 対 1 写像であれば逆変換 $ f^{-1}$ が存在する. 正則変換は逆変換が存在する線形変換である,と読み替えてもよい.

定理 2.43 (正則変換と正則行列)   線形写像 $ f$ が正則変換であることと, $ f$ の表現行列が正則行列であることとは必用十分な条件である.


(証明)     合成写像と表現行列は

$\displaystyle g\circ f=h,\qquad BA=C$    

と表される.$ g=f^{-1}$ のとき

$\displaystyle f^{-1}\circ f=\mathrm{id}:$恒等変換$\displaystyle ,\qquad BA=E:$単位行列    

が成り立つ.よって $ B=A^{-1}$ である.

注意 2.44 (逆変換と逆行列)   $ f^{-1}$ が存在するとき表現行列 $ A$ の逆行列 $ A^{-1}$ も存在する.

例 2.45 (正則変換の具体例)   線形写像 $ f:\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}^2;$

$\displaystyle f\left( \begin{bmatrix}1 \\ 1 \end{bmatrix} \right)= \begin{bmatr...
...gin{bmatrix}1 \\ -1 \end{bmatrix} \right)= \begin{bmatrix}-4 \\ 2 \end{bmatrix}$    

の表現行列とその行列式は

$\displaystyle A= \begin{bmatrix}-1 & 3 \\ 3 & 1 \end{bmatrix}, \qquad \det(A)= \begin{vmatrix}-1 & 3 \\ 3 & 1 \end{vmatrix} =-10\neq0$    

である. $ A$ は正則行列であるから,$ f$ は正則変換である.

例 2.46 (正則変換ではない具体例)   射影変換 $ f:\mathbb{R}^3\to\mathbb{R}^3$; $ \vec{y}=f(\vec{x})=\vec{x}-(\vec{x},\vec{e}_{3})\vec{e}_{3}$ の 表現行列とその行列式は

$\displaystyle A= \begin{bmatrix}1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{bmatri...
...ad \det(A)= \begin{vmatrix}1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{vmatrix} =0$    

である. よって $ A$ は正則でないので $ f$ もまた正則ではない.

例えば点 $ (x_{1},x_{2},1)$ と点 $ (x_{1},x_{2},2)$ を 射影変換 $ f$ で写すとどちらも点 $ (x_{1},x_{2},0)$ に写される. 他にも点 $ (x_{1},x_{2},0)$ を通り軸 $ x_3$ に平行な直線上の点は全て $ f$ により点 $ (x_{1},x_{2},0)$ に写される. 逆変換 $ f^{-1}$ を考えるとき点 $ (x_{1},x_{2},0)$ から戻され点は 直線上に無限に存在することになる. よって $ f$ は 1 対 1 写像ではない. また, $ \mathbb{R}^3$ の任意の点は $ f$ により 全て $ x_{1}x_{2}$ 平面上に写される. $ x_{1}x_{2}$ 平面は $ \mathbb{R}^3$ の部分空間であるので, $ f$ は上への写像でもない.


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Kondo Koichi
Created at 2004/12/13