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8 正項級数

定義 4.43 (正項級数)   級数 $ \displaystyle{\sum_{n=1}^{\infty}a_{n}}$ のうち $ a_{n}\geq0\ (n=1,2,\cdots)$ を満たすものを 正項級数(positive term series)と呼ぶ.

注意 4.44 (正項級数の単調性)   正項級数 $ \sum a_{n}$ の部分和の数列 $ \{S_{n}\}$ は単調増加である.


(証明) $ S_{n+1}-S_{n}=a_{n}\geq0$ より $ S_{n}$ は広義の単調増加である. 証明終了.

定理 4.45 (正項級数の収束定理)   正項級数 $ \sum a_{n}$ の部分和から得られる数列 $ \{S_{n}\}$ が上に有界なとき, $ \sum a_{n}$ は収束する.


(証明) $ S_{n}$ は広義の単調増加である. 有界な単調数列は収束するので, $ S_{n}$ が上に有界なとき $ \sum a_{n}$ は収束する. 証明終了.

例 4.46 (正項級数の収束定理の具体例)   正項級数 $ \displaystyle{\sum_{n=1}^{\infty}\left(\frac{1}{2}\right)^{n}}$ を考える. 部分和は

$\displaystyle S_{n}$ $\displaystyle =\frac{1}{2}+\frac{1}{2^2}+\cdots+\frac{1}{2^n}$ (480)
  $\displaystyle =\frac{1}{2}\left(1+\frac{1}{2}++\cdots+\frac{1}{2^{n-1}}\right)$ (481)
  $\displaystyle =a(1+r+r^2+\cdots+r^{n-1})$ (482)
  $\displaystyle =a\frac{1-r^{n-1}}{1-r}= \left(\frac{1}{2}\right) \frac{1-\left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}}{1-\frac{1}{2}}= 1-\left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}$ (483)

となるので

$\displaystyle 1-S_{n}=\left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}>0 \qquad \Rightarrow \qquad S_{n}<1$ (484)

を得る.$ \{S_{n}\}$ は上に有界である. よって定理より級数 $ \sum(1/2)^{n}$ は収束する. 実際,極限を計算すると 前述の例題より $ \sum\left(\frac{1}{2}\right)^n=1$ である.

定理 4.47   正項級数 $ \sum a_{n}$ に関して $ \{S_{n}\}$ が 有界なとき $ \sum a_{n}$ は収束する.

定理 4.48   正項級数 $ \sum a_{n}$ が収束するとき $ \displaystyle{\lim_{n\to\infty}a_{n}=0}$ が成り立つ.



Kondo Koichi
Created at 2004/08/14