2.38 1 変数の陰関数
定義 2.164 (陰関数) 変数 , が条件 をみたすとき, は の関数 であり, または は の関数 であるとみなせる. すなわち,
により定義される関数 , を, で定義される陰関数(implicit function)という.
注意 2.165 (陽関数) 関数 や などの関数は 陽に(explicit)表されているという.
定理 2.166 (陰関数の微分) 条件 で定義される陰関数 の導関数は, のとき
で与えられる.
(証明) 関数 を に代入すると
である.両辺を で偏微分すると
0
となるので, を得る.
例 2.167 (陰関数) 条件 で定義される陰関数 の 導関数を求める.条件 の両辺を で微分すると
となるので,
を得る.
例 2.168 (陰関数) 平面内の円 を考える. このとき, は の関数 とみなされる. これを陽に書くと
となる.これは 価関数である. 多価関数のままでは取り扱いに面倒が多い. を陰関数として取り扱い導関数を求める. 条件 に を代入すると
である.両辺を で微分すると
となり,
を得る. さらに微分すると 2 階導関数と 3 階導関数は
となる. は 2 価関数であるから , , も 2 価関数である.次に,円 上の 点 において, 関数 を点 まわりで テイラー展開する. , であることに 注意すると
となるので,テイラー展開は
と得られる.
例 2.169 (陰関数) 条件
により定義される陰関数 を考える. は陽に書くと, 2 次方程式
を解いて,
と表される. しかし,この形では取り扱いが面倒であるから, 陰関数として取り扱う. 導関数 は
を用いて,
と求まる.
例 2.170 (陰関数) 条件 で定義される陰関数 を考える. 条件 の両辺を で微分すると
☆
となる.よって
を得る.(☆)をさらに で微分すると
0
となる.両辺に を掛けてまとめると
0
となる.また条件より であることを用いると
を得る.曲線 上の点 において,関数 を の まわりでテイラー展開する. であることを用いて
であるから,
と得られる.
平成21年1月14日