4.6 一般の線形写像の表現行列
次元のベクトル空間 と 次元のベクトル空間 において, 基底をそれぞれ , とすると, , の任意のベクトルはそれぞれ
△ ▲
と表される. このとき, 線形写像 ; は
☆
となる. ベクトル , , , は のベクトルであるから, 基底 を用いて
と表されるので
★
と書ける. 以上より(▲), (☆), (★)より
を得る. は 1 次独立であるから
♭
が成り立つ. 線形写像 により 線形写像 が定まる.
注意 4.26 (一般のベクトル空間における線形写像) 一般のベクトル空間における線形写像 と 数ベクトル空間における線形写像 とを 次のように同一視する:
定義 4.27 (線形写像の表現行列) ベクトル空間 の基底を とし, ベクトル空間 の基底を とする. このとき, 線形写像 が
をみたすとき, 行列 を の基底 と の基底 に関する 表現行列という.
定理 4.28 (線形写像の行列表示) 線形写像 において, ベクトル空間 の基底が であり, その基底における座標を とし, ベクトル空間 の基底が であり, その基底における座標を とする. このとき, 行列 が の表現行列であることと,
が成り立つこととは,必要十分条件である.
注意 4.29 (表現行列) , とし, の基底を標準基底 とし, の基底を標準基底 とする. このとき , となるから, (♭)は となる. よって, 本節の表現行列の定義により定まる と 前節の表現行列の定義により定まる とは, この条件のもとで一致する.
注意 4.30 (表現行列) 線形写像 の標準基底に おける表現行列は である.
定理 4.31 (基底を取り換えたときの表現行列) 線形写像 において の基底 , , , と の基底 , , , に 関する表現行列を とする. すなわち,
とする. の基底 , , , と の基底 , , , に 関する表現行列を とする. すなわち,
とする. このとき
が成り立つ. ここで , は基底の変換行列であり,
である.
(証明) まず,
が成り立つ.また,
となる.よって, であり
が成り立つ.
定理 4.32 (線形変換の表現行列の基底の取り替え) ベクトル空間 の基底 , , における 線形変換 の表現行列を とし, 基底 における の表現行列を とする. また,基底 から 基底 への 基底の変換行列を とする. このとき
が成り立つ.
(証明) まず,表現行列 , は定義より
をみたす.基底の変換行列 は
をみたす. このとき
が成り立つので となる. よって を得る.
例 4.33 (表現行列の基底の取り替えの具体例) 線形変換 ;
☆
の表現行列を求める. の基底を とし, 多項式 , を表すと
△ ▲
となる. このとき(☆)より
となる. ここで, , , を(☆)に代入すると それぞれ , , となるので,
を得る. は基底 に関する の表現行列である. これを代入すると
♭
となる. (▲)と比較すると が成立する. よって,線形変換 は
と行列表示で書かれた線形変換 と等価である.次に基底 に関する 表現行列 を求める. すなわち, は
をみたす. 基底 から への 変換行列 は
により与えられる. このとき,多項式 , は
□ ■
となる. (△), (▲)と(□), (■)とを比較すると
を得る. これは基底 における 座標 と 基底 における 座標 との座標変換を表す. (♭), (□), (■)より
となるので, となり,
を得る. 以上より基底 に関する の表現行列 は
と得られる. よって,基底 に関する線形変換 の行列表示は
となる.
Kondo Koichi
平成18年1月17日