5.31 直交行列の対角化
定理 5.105 (直交行列の固有値) 直交行列の固有値は絶対値が となる複素数である.
(証明) , とし, 上の内積を用いて,
が成り立つ. ここで, を用いた. , より, が成立する.
注意 5.106 (直交行列) 直交行列は正規行列である.
定理 5.107 (直交行列の固有ベクトル) 直交行列において, 異なる固有値に属する固有ベクトルは直交する.
(証明) 直交行列は正規行列であるので固有ベクトルは直交する. または,次のように示す. であり, 固有値は複素平面の単位円上にあるから, , , ( ) とする. 上の内積を用いて,
となる. ここで を用いた.
であるから, より を得る.
定理 5.108 (直交行列の対角化) 直交行列 の 固有値を とする. このとき, は ユニタリー行列 を用いて
と対角化される. ただし, は の固有ベクトルであり, がユニタリー行列となるように選ぶとする.
定理 5.109 (直交行列の実標準形) 直交行列 の 固有値を
とする. このとき, は 直交行列 を用いて
と実標準形でブロック対角化される. ただし, は の固有ベクトルであり, が直交行列となるように選ぶとする.
例 5.110 (直交行列の対角化の具体例) 行列
を対角化する.
より,固有値は
である.
より,固有ベクトルはそれぞれ
となる. であるから, 規格化して , とする. このとき はユニタリー行列 を用いて
と対角化される. 実標準系では
となる.
Kondo Koichi
平成18年1月17日