3.1 微分係数

定義 3.1 (微分と微分係数)   関数 $ f(x)$$ x=a$ において連続で,極限

$\displaystyle \lim_{h\to0} \frac{f(a+h)-f(a)}{h}$ (188)

が存在するとき, $ f(x)$$ x=a$ において微分可能(differentiable) であるという. このとき有限確定した極限を $ f'(a)$ と表記し, $ x=a$ における$ f(x)$微分係数(differential coefficient)と呼ぶ.

定義 3.2 (右微分係数,左微分係数)   右極限による関数 $ f(x)$ の微分係数を

$\displaystyle f'(a+0)=\lim_{h\to+0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}$ (189)

と書き,右微分係数(right differential coefficient)と呼ぶ. 左極限による関数 $ f(x)$ の微分係数を

$\displaystyle f'(a-0)=\lim_{h\to-0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}$ (190)

と書き,左微分係数(left differential coefficient)と呼ぶ.

注意 3.3 (微分係数の存在)   $ f'(a)$ が存在するとは,すなわち $ f'(a+0)$, $ f'(a-0)$ が存在し, かつ $ f'(a+0)=f'(a-0)$ が成り立つことを意味する.

3.4 (微分係数の具体例)   $ f(x)=x^2$$ x=a$ における微分係数を求める.まず

$\displaystyle g(h)=\frac{f(a+h)-f(a)}{h}$ (191)

とおく.$ g(h)$ を計算すると

$\displaystyle g(h)=\frac{(a+h)^2-h^2}{h}=\frac{2ah+h^2}{h}=2a+h$ (192)

を得る.よって

$\displaystyle f'(a)=\lim_{h\to 0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}= \lim_{h\to 0}g(h)= \lim_{h\to 0}(2a+h)=2a$ (193)

により微分係数 $ f'(a)=2a$ が求まる.

3.5 (微分不可能な点の具体例)   関数 $ f(x)=\vert x\vert$$ x=0$ において連続であるが,微分可能ではない. 以下これを示す.まず

$\displaystyle g(x,h)=\frac{f(x+h)-f(x)}{h}=\frac{\vert x+h\vert-\vert x\vert}{h}$ (194)

とおく. $ x\geq0$, $ h>0$ のとき

$\displaystyle g(x,h)=\frac{\vert x+h\vert-\vert x\vert}{h}=\frac{x+h-x}{h}=\frac{h}{h}=1$ (195)

である. $ x\leq0$, $ h<0$ のとき

$\displaystyle g(x,h)=\frac{\vert x+h\vert-\vert x\vert}{h}=\frac{-(x+h)-(-x)}{h}=\frac{-h}{h}=-1$ (196)

となる.これより

$\displaystyle f'(+0)$ $\displaystyle =\lim_{h\to+0}\frac{f(0+h)-f(0)}{h}=\lim_{h\to+0}g(0,h)=1\,,$ (197)
$\displaystyle f'(-0)$ $\displaystyle =\lim_{h\to-0}\frac{f(0+h)-f(0)}{h}=\lim_{h\to-0}g(0,h)=-1\,$ (198)

を得る.右微分係数と左微分係数は存在するがその値は異なる. よって $ x=0$ における微分係数 $ f'(0)$ は存在しない. $ f(x)$$ x=0$ において微分不可能である.

Kondo Koichi
平成17年8月31日