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26 直交補空間
定義 1.115 (ベクトルと部分空間の直交) ベクトル と 部分空間 に含まれるすべてのベクトル とが 直交するとき,すなわち
が成り立つとき, と とは直交するといい,
と表記する.
例 1.116 (ベクトルと部分空間とが直交する具体例) の部分空間
とベクトル と は直交 する. なぜなら, は方程式 の 解空間として表されるからである. この例では は平面であり は法線ベクトルである.
定義 1.117 (直交補空間) ベクトル空間 とその部分空間 に対して, 部分空間
を における の直交補空間という.
定理 1.118 (直交補空間による直和分解) ベクトル空間 における部分空間 の直交補空間 は
となる.次元は
の関係が成り立つ.
定理 1.119 (直交補空間の次元) 部分空間
の次元は
である.ただし,
とおく. の直交補空間 は 方程式 の解空間であり,
となり,次元は
である.
例 1.120 (直交補空間の具体例) 部分空間
に対する直交補空間 を求める. の任意のベクトルを とする. は の任意のベクトル と 直交するので が成り立つ. こりより,
と表される. すべての , について成り立つためには
をみたさなければならない. この連立方程式を書き直すと
であり,
となる. これを解く. 係数行列を簡約化すると
となるので,解は
となる. よって,直交補空間は
と得られる.の基底 と の基底 とは 1 次独立である. よって であるので,
が成り立つ. また , , は の 基底となることに注意する. つまり
である.
例 1.121 (直交補空間の具体例) ベクトル を 正規直交基底とする. このとき
が成り立つ. ここで
とおくと, は における の直交補空間となる. なぜなら任意のベクトル , に対して
が成り立ち, と は直交するからである. よって
であり, は とその直交補空間 に よって直和分解される. 同様に
と部分空間とのその直交補空間とで直和分解される. ただし,
とおく.
例 1.122 (直交補空間の具体例) 正規直交基底 で 生成されるベクトル空間
を考える.このとき は直和分解されて
と表される. は における の直交補空間である. さらに を直和分解して
と表される. は における の直交補空間である. 同様に繰り返して直交補空間で直和分解が可能である:
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Created at 2004/12/13