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2 行列のいろいろ
定義 2.2 (零行列) 成分が全て零の行列
(205)
を零行列(zero matrix)と呼ぶ. は 型の零行列を意味する.
定義 2.3 (正方行列) 行と列の数が等しい行列
(206)
を正方行列(square matrix)と呼ぶ. 行列の成分のうち左上から右下へ並んでいる成分 , , , を 対角成分(diagonal components)と呼ぶ.
定義 2.4 (対角行列) 対角成分以外の成分が全て零の正方行列
(207)
を対角行列(diagonal matrix)と呼ぶ.
定義 2.5 (単位行列) 対角成分がすべて の対角行列
(208)
を単位行列(unit matrix)と呼ぶ. の単位行列を と書き 次の単位行列と呼ぶ. 単位行列は後述するように行列の積において ``'' の役割をはたす.
定義 2.6 (スカラー行列) 対角成分の値がすべて等しい対角行列を スカラー行列(scalar matrix)と呼ぶ.
例 2.7 (スカラー行列の具体例)
(209)
定義 2.8 (上三角行列) 対角成分を除く左下半分がすべて 0 の正方行列
(210)
を上三角行列(upper triangular matrix)と呼ぶ.
定義 2.9 (下三角行列) 対角成分を除く右上半分がすべて 0 の正方行列
(211)
を下三角行列(lower triangular matrix)と呼ぶ.
定義 2.10 (転置行列) 行と列の成分を入れ換えた行列
(212)
を転置行列(transposed matrix)と呼ぶ. 行と列を入れ換える演算を転置(transpose)をとるという. 転置された行列を と書く.また と書くこともある.
例 2.11 (転置の具体例)
(213)
問 2.12 を示せ.
(証明) , とおく. 行と列を入れ換えるので は とも書ける. つまり となる. 転置をとる操作を成分でみると, 行と列の添字を入れ換える操作に対応する. よって
(214)
となる.証明終了.
定義 2.13 (対称行列) を満たす行列を 対称行列(symmetric matrix)と呼ぶ.
例 2.14 (対称行列の具体例)
(215)
問 2.15 (対称行列の一般的な表現) 対称行列は正方行列で一般に
(216)
と表わされる. これを示せ.
定義 2.16 (歪対称行列) を満たす行列を 歪対称行列(skew symmetric matrix) または, 交代行列(alternative matrix) と呼ぶ.
例 2.17 (歪対称行列の具体例)
(217)
問 2.18 (対称行列の一般的な表現) 歪対称行列は正方行列で一般に
(218)
と表わされる. これを示せ.
問 2.19 教科書(p.5)問題 1.1.
定義 2.20 (共役行列) 全ての要素を複素共役をとした行列
(219)
を共役行列??(???)という.
定義 2.21 (共役転置行列) 共役かつ転置な行列
(220)
を共役転置行列(????)という.
定義 2.22 (エルミート行列) を満たす行列をエルミート行列(Hermite matrix)という.
問 2.23 (エルミート行列の成分) エルミート行列の対角成分は実数となることを示せ.
定義 2.24 (歪エルミート行列) を満たす行列を 歪エルミート行列(skew Hermite matrix)という.
問 2.25 (歪エルミート行列の成分) 歪エルミート行列の対角成分は純虚数となることを示せ.
定義 2.26 (直交行列) を満たす行列を 直交行列(orthogonal matrix)という.
定義 2.27 (ユニタリー行列) を満たす行列を ユニタリー行列(unitary matrix)という.
定義 2.28 (逆行列) 行列 に対して を満たす行列 を 逆行列(inverse matrix)といい, と表記する. 読み方は A inverse である.
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Created at 2004/11/26