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9 収束する数列のいろいろ
例 1.24 (有理式で表される数列の極限) 一般項が
(38)
により与えられる数列を考える. 定理を適用して計算を試みる. 分子分母の極限をとり,
←不確定 (39)
を得るがこれは誤りである. そもそも分子分母はそれぞれ発散するので定理は適用不可である. あらためて計算を行なう:
(40) ←有限確定 (41)
今回は有限確定となり極限が求まる. 計算の途中においては,定理が適用可能であるかの判断は難しい. 最終形まで計算した結果が有限確定または無限確定であれば, 途中の計算も定理が適用可能であることが多い.次に一般項が
(42)
で与えられる数列を考える.式を変形して極限を考える:
←無限確定 (43)
最後に一般項が
(44)
である数列の極限を考える. 式を変形して極限を考える:
←有限確定 (45)
以上をまとめると, 有理式で表される数列の極限は, 有理式の最大次数の巾で分子分母を割った後に極限をとればよい.
例 1.25 (根号を含む数列の極限) 一般項が
(46)
で与えられる数列の極限を考える. 式を次のように変形した後に極限をとる:
(47)
問 1.26 参考書(p.12)第1章演習問題.
例 1.27 (等比数列の極限) 等比数列 の極限を考える. (i) , (ii) , (iii) の場合に分けて議論する. まず,(i) のとき,常に である.極限は である. つぎに,(iii) のとき, とおく.このとき をみたす. を を用いて書き下すと
(48)
を得る.ここで は 二項係数(binomial coefficient)であり,
(49)
と定義する. は階乗(fractorial number)であり,
(50)
と再帰的に定義する. をあらためて書き直すと
(51)
となる. 第三項以降を足したものは正となるので,
(52)
を得る. のとき より を得る. 最後に,(i) のときを考える. を用いて を と置き換える. このとき を満たす. を用いて を書き下すと,
(53)
を得る. 不等式
(54)
が成立する. のとき であるから, はさみうちの定理より を得る. 以上をまとめると
(55)
が求まる.
公式 1.28 (ネピア数)
(56)
この定数 をネピア数(Napier's number)という.
問 1.29 極限 を求めよ.
問 1.30 次の漸化式で与えられる数列の一般項と極限を求めよ.
- (1)
- .
- (2)
- .
(答え) (1)
(57)
(58)
(2)
(59) (60) (61)
かつ のとき は 0 に収束する. それ以外は発散する.
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Created at 2003/08/29