定理 3.97 (グリーンの定理)
領域
内で関数
が連続なとき,
が成り立つ.
(証明)
が に関して単純な領域
であるとき,
より,
が成り立つ.
任意に与えられた領域を
に関して単純な領域として分割し,
積分を求める.このとき重なり合う境界は向きが異なるので,
積分値は符号が反転し相殺しあう.
よって,任意の領域に対しても上式が成立する.
同様にして
が
に関して単純な領域であるとすると
が成り立つ.これらを合わせてグリーンの定理を得る.
注意 3.98 (グリーンの定理)
グリーンの定理は線積分と多重積分の移り合いを表す.
例 3.99 (グリーンの定理の使用例)
を半径
の円上を 1 周する有向曲線
とする.
このとき
の内部の領域は
である.
領域
において関数
,
は連続であるから,
線積分
はグリーンの定理が適用でき,
と計算される.
例 3.100 (グリーンの定理)
線積分
を計算する.
ただし,
積分路
は
,
,
(
) で囲まれる領域の境界を
正の向きに回るとする.
積分路
内の領域を
とおく.
領域
内で
,
は連続であるから,
グリーンの定理が適用可能である.
これを用いると,
と求まる.
例 3.101 (グリーンの定理)
周回積分
を求める.
ただし,積分路は
,
: 中心は原点,半径
の円を正の向きに一周,
: 中心は原点,半径
の円を負の向きに一周とする.
の内部の領域は
である.
領域
内で関数
,
は連続であるから,
グリーンの定理が適用可能である.
線積分は
と多重積分に変わる.
極座標に置換積分すると,
座標では
であるから,
となる.
例 3.102 (グリーンの定理が使用不可な例)
線積分
を考える.
は単位円上を 1 周する有向曲線であり,
の内部の領域は
である.
関数
は原点で連続ではないので,
領域
のすべての点において
関数
,
は連続ではないからグリーンの定理は適用できない.
誤りではあるが,
グリーンの定理を適用して計算すると,
より,
となる.
正しくは,
と得られる.
平成21年1月14日