2.49 ラグランジュの未定乗数法
定理 2.226 (ラグランジュの未定乗数法) 条件 のもとでの関数 の極値の候補は, とおき, についての連立方程式
を解くことで得られる. これを ラグランジュの未定乗数法(Lagrange multiplier method) という.
(証明) 条件 より と は独立ではないから, 陰関数 , が存在する. この陰関数の導関数はそれぞれ
(ただし,) (ただし,)
となる. または のどちらかが従属変数であるとき, 関数 は 1 変数関数
とみなされる. ここで, 関数 が点 で極値をもつとする. このとき , が成り立つ. より,
0
となり, より
0
が成り立つ. よって,この 2 つの式は 同じ 1 つの式
☆
となる. この方程式を解くことで極値の候補 が定まる. しかし,この方程式のままでは解くのが難しい. 次のように式変形する. (☆)を変形して
とおく. これをもとの 2 つの式へそれぞれ代入して
を得る. ここで も未知変数であると考えて, 条件 とあわせて, についての連立方程式とみなす. とおけば, この 3 つの方程式は , , と表される.
例 2.227 (条件付き極値) 条件 のもとでの 関数 の 極値を求める. まず,
とおく.このとき連立方程式
を考える.これをまとめると
となる. のとき第 3 式より であり, 第 2 式より となる. のとき第 3 式より であり, 第 1 式より となる. のとき 第 2 式より であり, 第 3 式より となる. のとき 第 1 式より であり, 第 3 式より となる. よって連立方程式の解は
となる.極値の候補となる点は
である. これらの点が極値であるか確認する. 条件 により定まる 2 つの 陰関数をそれぞれ , とおく. これらの導関数は
ただし のとき ただし のとき
となる. また,合成関数 , の 導関数はそれぞれ
ただし のとき ただし のとき
となる.さらに微分すると
ただし のとき ただし のとき
となる. よって, のとき, となるから を用いて
となるので, は極小値である. また, のとき, となるから を用いて
となるので, は極大値である.
例 2.228 (条件付き極値) 条件 のもとでの 関数 の極値を求める. まず,
とおく.このとき連立方程式
を考える.これをまとめると
となる. 第 1 式より とする. このとき第 3 式より となり 実数解をもたないので不適である. 第 1 式より とする. このとき, である. なぜなら, とすると となるからである. よって第 2 式より である.
を第 3 式に代入すると
となる.実数の範囲内の解は
である. 以上より,連立方程式の解は
(複合同順)
となる.極値の候補となる点は
である. これらの点が極値であるか確認する. 条件 により定まる陰関数を とおく. この導関数は
ただし のとき
となる. また,合成関数 の導関数は のとき
となる.さらに微分すると
となる. よって, のとき,
となるので, は極小値であり, のとき,
となるので, は極大値である.
例 2.229 (条件付き極値) 条件 () のもとでの 関数 の極値を求める. まず,
とおく.このとき連立方程式
を考える.これをまとめると
となる. 第 1 式より を第 2 式に代入して
となる. のとき,第 1 式では となり, 第 3 式では となる. これは矛盾するので不適である. のとき, であり 第 3 式から となる. のとき, であり 第 3 式から となる. 以上より,連立方程式の解は
(複合同順)
となる.極値の候補となる点は
である. これらの点が極値であるか確認する. 条件 により定まる陰関数を とおく. この導関数は
ただし のとき
となる. また,合成関数 の導関数は のとき
となる.さらに微分すると
となる. よって, のとき,
となるので, は極大値である. のとき,
となるので, は極小値である.
平成21年1月14日