2.14 行列の演算に関する緒性質
定理 2.53 (行列の演算の性質) 行列の演算に関して次の性質が成り立つ:ただし, の型は互いに演算が定義されている型とする.
- (1)
- (加法の交換則)
- (2)
- , (加法の零元) は数の足し算の 0 と同様な振る舞い
- (3)
- (加法の結合則)
- (4)
- , (乗法の単位元) は数の掛け算の と同様な振る舞い
- (5)
- , (乗法の零元) は数の掛け算の 0 と同様な振る舞い
- (6)
- (乗法の結合則)
- (7)
- , (分配則)
- (8)
- ,
- (9)
- ,
- (10)
- ,
- (11)
- (12)
- (13)
- (14)
- (15)
問 2.54 (行列の演算の性質)性質(1)-(12)を示せ.
(証明)(1), (4), (11), (12) を示す.残りは自習.(1) を示す.まず , とおく. このとき は和の定義より
(306)
となる.次に を求める.和の定義より
(307)
となる.各要素 は単に数なので, 和について可換である. よってすべての要素の和の順番を入れ換えて,
(308)
となる.以上より が示された.(4) を示す.まず , とおく. さらに とおく. を計算する. 積の定義とクロネッカーのデルタの定義に従って計算する. より
(309) (310) (311) (312)
を得る.これより が成り立つ. よって を得る. 以上より が示された. の場合も同様に示す.(11) を示す. まず, , とおく. 和の定義より
(313)
となる.転置の操作は行と列を入れ換えるので
(314)
となる.右辺の行列を二つの行列の和に分解し, それぞれの行列の転置をとると
(315)
を得る. 以上で示された.(12) を示す.まず
(316)
とおく. 次に
(317)
とおく. まず , を求める. 積の定義より
(318)
となる. , , を用いれば
(319)
を得る.以上より となる. 証明終了.
Kondo Koichi
平成17年9月15日